データヘルスと医療施設設計

昨年、厚生労働大臣から「データヘルス計画」が公表されました。病院やクリニック、健診センターに個々に蓄積されている国民の診療、健診情報を、近い将来に国民の健康と医療のための「ビッグ・データ」として活用できるようにする構想です。

 最近は病院やクリニックを受診して支払いの診療明細書を印字されたシートで渡されているとおり、医療機関の「レセプト」(保険診療報酬明細書)はほぼ100%電子化され、治療や投薬のデータは保険審査支払機関には集積していますが、それを個人の診断、病歴データとしては利用できない状態です。

 現在は電子カルテの普及率が病院とクリニックともにまだ3割程度、カルテを手書きのドクターがまだまだ多く、しかも医療機関ごとに異なる電子カルテシステムが導入されていて、医療機関が持つ個人の医療データは共有できていません。また健康診断や人間ドックのデータも病院やクリニックで受ける医療に活かされず、医療機関間の医療データを共有しての活用は進んでいない状況です。

「データヘルス計画」は、医療機関間の医療データ情報のフーマットを統一して、データを簡素化、全国統一の仕様のクラウド上で情報交換ができる仕組みをつくる計画です。これが実現すればどこの医療機関でも、共有のデータベースから個人の健診情報や医療履歴を閲覧して分析することで、適切な治療や投薬ができ、医療の効率や質を上げる、また病気の予防や健康維持にも役立て、患者本位の医療を進めることが可能になります。

 「データヘルス」時代の病院やクリニックの設計では、施設内のデータ通信ネットワークと外部との情報共有ネットワークの構築が重要になると考えています。

医療・高齢者施設の建築と未来